第40回       50歳になった

 そう言うと、「えー、見えない!」とたいていの人に驚かれる。どうやら実年齢よりも若く見られているらしい。この間、母親にも「え? あんた、50になったの? ウソでしょ?」と驚かれた(笑)。

 これまで年齢というものをあまり意識してこなかったから、自分が一番びっくりしている。村上春樹がエッセイで「年齢に関していちばん大事なことは、なるべく年齢について考えないようにすることだと思っている」と書いていたけど、同感。普段は忘れていればいいのだ。でも、さすがに50はね。なかなかの歳ですよね。オジサンと呼ばれる年齢であることは確か。

 テニスをやっていて、体力の衰えを感じたことはあまりないです。ホントに。疲れは取れにくくはなった。日曜の朝にリーグ戦の試合をすると、その後一週間くらいは体がどんよりと重い。でも、例えばドロップショットを打たれても、とりあえずベースラインからネットまでボールを追いにいく気力はまだある。それに、気持ちは学生の頃と変わっていないような気がする。精神的にはまったく成長していないです。はい。

 この夏、ぼんやりテレビで高校野球を観ていたときのこと。監督をやっている人たちって、てっきり自分より年上のオジサンばかりと思い込んでいたのだけど、ベンチにどっしり座っている彼らをよく観察してみると、なんだかみんな若いのである。気になって調べてみたら、甲子園出場校49校のうち、50歳以下の監督さんはなんと30人もいた。50歳はもう高校野球の監督としては年寄りすぎるのであった。軽くショック。

 同じ50歳の、つまり自分と同級生の有名人は、まず松本伊代。この人は僕と生年月日がまったく同じなので、勝手に親近感を持っています。中森明菜、本木雅弘、奥田民生、尾崎豊も同い年。あとドリカムの吉田美和。この人は変わらないですよね。先日、今シーズン限りでの引退を表明した中日ドラゴンズの山本昌も同い年。長いことお疲れさまでした。

 テニス界にはあまりビッグな人がいないんですよね。ギー・フォルジェって知ってます? 哲学者みたいなルックスでサウスポー、ウェアもラケットもラコステで、雰囲気がいかにもフランス人って感じで好きだったな。彼は同い年。

 50歳かあ。いろいろな意味で、人生の岐路に立っているという気がする。ま、テニスガーデンでは若手の部類だから、まだまだこれからだと思ってガンバっていきます!

 最後に。この一年、自分を取り巻く環境が大きく変化して、なかなか落ち着きませんでした。自分の意思で決断し、選んだ道ではあるのだけど。

 うまく表現できないのですが、そんな日々の中であっても、テニスは変わらずそこにあって、そして、テニス仲間も変わらず受け入れてくれて。そのことがどんなに自分にとって励みになったか。テニスに癒されました。

 感謝しています。ありがとう。

                         (2015/10/7)


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