第30回       「オーラ」の話

 先日、うちの店で写真展を開いていただいた写真家の方に、おもしろい話を聞いた。この方はベテランのフリーカメラマンで、現在は展示したようなアーティスティックな作品のほかに料理を専門に撮っているそうだが、その昔は男性週刊誌でグラビアを担当したり、写真週刊誌の仕事で、芸能人同士の逢引きなどのスクープ写真を狙って張り込みなどもしていたらしい。ちなみに、もうだいぶ前になるが、巨人のベテラン、○選手と、当時柔道界の国民的スターだった○ちゃんの逢引き現場を最初に押さえたのはこの方だった!

「ヌード撮影なんて、うらやましい! 今度、見学させてください!」と目を輝かせてお願いしたら、「オススメできないな」とその方。「何度も撮ってると慣れちゃって、まったく感じなくなる」のだそうだ。そういうものかな。

 まだデビュー前の、事務所がこれからテレビなどに売り込もうとしているタレントの卵をグラビア撮影で長年撮っていると、「あ、このコは売れるな」というのが一瞬にしてわかるのだそうだ。そして、その予想はたいてい当たるのだそうだ。地方から出てきたばかりでまだ洗練されていなかったり、垢抜けていなかったりするのだが、それでもその人の持っている特別なオーラのようなものが、ファインダー越しにびんびん伝わってくるらしい。それに、不思議とどんなポーズを撮ってもキマルというか、サマになるのだと言っていた。

 以前にも書いたことがあるが、僕は以前、ジュニアで活躍していた頃の、まだ15歳か16歳だったマルティナ・ヒンギスをフレンチ・オープンの会場で撮影した経験があるのだけど、正直、彼女からはそういったオーラなどはまったく感じなかった。これっぽっちも。いや、あくまでも自分にとっては、ということです。当時からヒンギスは一部のメディアから「次代のスター」と騒がれていたから、敏感な人は特別なオーラのようなものを感じ取っていたのだろうけど。

 逆に、「この選手はスゴイ! 将来きっと伸びるにちがいない。ほかのメディアよりも先に取り上げよう!」と興奮して大会レポートの中でクローズアップしたことが何度かあるが、ほとんどの場合、そうはならなかった。今、急に思い出したけど、ミリヤナ・ルチッチ、どうしてるのだろう?

 そういえば昔、デートしていた女の子から「もう、サイテー!」とわけもわからず急に怒られ、立ち去られた経験がある。単に鈍感なだけか。でも、どうやらオーラを感じ取る能力はすべての人が持っているわけではないみたいだ。寂しいことに。

                         (2012/11/3)


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