第27回       独りではない


 

 今朝、ふと、ベランダに放置していたブルーベリーの鉢を見てみたら、枝にポップコーンのようにぷっくりとした白いつぼみが、いくつもついていた。

 春の息吹。寒い間に少しずつ準備をして、ある日、突然、花開く。それは時の魔法のようで、感動的だ。遠い昔から、日本という国は、そのような季節の移り変わりを何度も何度も繰り返してきた。どんなことが起こっても、春は確実にやってくる。キラキラとした明るい光は、すべての人に降り注ぐ。たとえ何かに悩んでいたり、大きな問題を抱えていたりしていたとしても、この悠々たる時の流れを誰も止めることができないのだ。

 春の輝くような光には、ほかの季節では感じることができない新鮮なパワーがあると思いませんか? 傷は癒され、未来には可能性が満ち溢れている(ように感じる)。もう何年も続けている、自分にとってはもはや日常となっているテニスが、ふたたび新鮮に感じるのがこの季節。テニスの楽しさ、すばらしさを、再認識する。そして、何か新しいことを始めたい、挑戦したい、という欲求が体の底から沸き起こってくるような感覚も、この季節特有なものだ。

 忘れることのできない特別な一年が過ぎて、心に残るのは、人と人とのつながりの大切さだ。さまざまなかたちのつながりを感じたけど、自分の場合、テニスを通じての結びつきは、ほかの関係よりも強いように思った。意識しないまでも、僕たちは支え、支えられている。そう、僕たちは決して、独りではない。僕が勝手に仲間だと思っている、テニスガーデンの皆さんにも、ぜひそのことを伝えたい。僕たちは、愛するテニスを通して、つながっているのです。

 春本番。立ち上がり、前を向いていきましょう! 縮こまらず、自分の中のつぼみを咲かせましょう! 2012年、自分もこの春から、ふたたび新鮮な気持ちでいろいろなことをスタートしたいと思っています。



                         (2012/04/14)


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