先日、テニス部のOB会報の取材で久しぶりに母校を訪れた。約束の時間まで余裕があっ
たので、懐かしい場所を歩き回ってみた。
キャンパスやその周辺の雰囲気は、すっかり変わってしまっていた。当然か。卒業して
からもう20年以上が経っているのだから。その20年という月日の中で、僕らはさまざま
な場所に移動し、いくつもの出会いと別れを経験し、今日に至っている。不思議なことに、
気持ちは当時とまったく変わっていないつもりなのだけど。しかし、20歳のときには、間
違いなく、これっぽっちも想像できなかった日々を今、暮らしているのだ。
学食の2階。図書館。グラウンド近くの定食屋「おばちゃんち」。入り浸っていた喫茶店
「グレース」と「サルビア」 。よく罰ランをした「L字」 。駅近くの「ドムドムバーガー」。
路駐スペースだった「モッチー裏」…。それら思い出の場所は、なくなっていたり、寂れ
ていたり、新しい建物になっていた。普段の生活ではなかなか気付くことがない、過ぎ去
った時間の長さを感じざるをえなかった。
現役の後輩たちへのインタビューと創部当初からのテニス部顧問であった先生へのイン
タビューを終えた頃にはすっかり暗くなり、予報通り雪が降り出していた。当時はなかっ
た、グラウンド横の駅へと続くきれいな道を歩きながら、僕は今日、目にした“なくなっ
てしまった、かつて自分がいた場所”を思い浮かべながら、意外にも晴れやかな気分だっ
た。後輩たちが口にした言葉の中に、また、彼らの目の輝きの中に、今の自分自身の一部
を形成していると思われる「獨協大学体育会テニス部」というDNAの存在を、確かに感じ
たからだった。
変わるもの、変わらないもの。同じ日は一日としてなく、人生は常に変化していく。そ
んな中で、いつまでも変わらないものを自分の中に持っていることは、とても幸せなこと
なのではないだろうか。そんなことを思った一日だった。
(2011/02/28)